ギャラリーのスタッフの求人に問い合わせをした、その日から採用を頂いた僕は、その名の通り、受付嬢として、ギャラリーの戸口で、お客さまをお迎えしますが、仕事内容は、ギャラリーの掃除から、電話番、クローク係から、お客様のお話のお相手など、様々な作業をこなさなくてはなりません。決して、暇を持て余すような仕事ではありません。アーティストさんの、作品を守る警備員役も兼ねているからです。
2週間交代ほどで、新たなアーティストさんの展示に切り替わる事がほとんどですが、その作品形態は様々で多種多様です。絵画、写真、陶器、彫刻、ファッション、ジュエリー、籠などなど、それらの作品のお値段もまちまちです。オーナーのKさんからの注意点は、特に小物関連の高価な作品は、ギャラリー内の奥の方へ、展示するようにアドバイスを受けています。盗難や、持ち去りを防ぐ為です。ですが、アーティストさんが、外のショウウィンドウからも、目に付くように出入り口付近に、どうしても展示したいとリクエストがる場合は、アーティストさんの意見に従うようにとの指導を受けました。
僕は、アーティストさんたちの作品の生みにかんする苦労が分からない訳ではないので、作品を悪党から守る警備員役として、目を常に光らせていました。ギャラリーのスタッフに就任する前は、お菓子の箱や小袋のパッケージデザインをしていました。デザイナーの端くれのような事をしていましたが、あまりにも自由な作品を作る事ができないストレスから、断念してしまい転職を試みたのです。
アーティストさんの作品が、ギャラリーに到着し、梱包や包装が解かれ、目の前に飾られる度、自由な作品作りにうらやましい気もしてきますが、その苦労も知っている為、作品を守る役目としては、情熱をもって取り組む事ができそうです。新たな作品が到着する度に、バックヤードで、梱包材や包装材、緩衝材の山々に囲まれながら、いつかの自分の作品の展示を夢見ていました。